バシェ音響彫刻 ~ 音の軌跡を未来につなぐプロジェクト ~ https://camp-fire.jp/projects/view/300732 ・応援・賛同メンバー 01
岡田 加津子 Kazuko Okada
作曲家、京都市立芸術大学教授 神戸生まれ。東京藝術大学作曲科卒業、同大学大学院音楽研究科修了。
2003 年バロックザール賞受賞。2016 年藤堂音楽賞受賞。作曲活動の一方で、 楽器を使わないで音楽する「リズミック・パフォーマンス」のワークショップを 全国的に展開。2015 年京都市立芸術大学においてバシェの音響彫刻の修復に立会い、 強い衝撃を受ける。それ以来、音響彫刻の保存と、それらを用いた新しい創造活動、 教育活動に情熱を注ぐ。京都在住。
【バシェへの想い】
なぜこんなにもバシェに魅入られてしまったのだろう...
2015 年 10 月、それは突然やってきた。トラクターに載せられて、 京都市立芸術大学彫刻棟に運ばれてきた金属のいろいろな断片。 何本もの棒や円錐形のラッパのような物、そして古びた鉄の枠。 それらは、大阪万博記念公園の倉庫から、いや、1970 年の大阪万博そのものから 45 年の時を隔てて、現在へとワープしてきたものたちであった。
EXPO’ 70 の鉄鋼館のホワイエを 17 基の音響彫刻で埋め尽くした フランソワ・バシェの、晩年の弟子マルティ・ルイツが、部材と共に そのトラクターに乗ってやってきて、彫刻棟で修復の日々が始まった。 彫刻専攻の教員や学生たちと、時には意見をぶつけ合いながら修復作業は進んだ。
私は音楽畑の人間ではあるけれど、もともと何かを作っている工房に心惹かれるたちだ 。 気になって彫刻棟に足しげく通った。そうして 10 日ほど経った頃、桂フォーンと 渡辺フォーンがいきなり出現した。そのスケールの大きさ、異形な姿にまず圧倒され、 そして触れた...これはなんだ?!これまでに一度も聴いたことのない響き、体験した ことのない音感、全身の毛穴が開いて音を皮膚で受け留めるような感触... バシェの音響彫刻の音を浴びて変わっていく自分の感性が、もはや自分のものではなく、 響きの中に溶け込んで、そのまま音と同化していくかのようであった。 このバシェとの強烈な出逢いが、その後の私を突き動かしてきた。バシェの音響彫刻は 見るだけのものではなく、聴くだけのものではない。触ること、体験すること、空気の 振動とともに響きの中に体を浸すためにある。 その伝道師としての任務に、私は喜んで生涯をかけようと思う。
2020 年 6 月 16 日
岡田加津子 Kazuko Okada
Comments