山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 YIDFF2019
一緒に本祭を体感してくれた「青木香さん」のレビュー紹介
本当に、本当に、濃密な時間であった。
以下 「青木香 さん Facebook より」
今回の初山形(初東北)は「山形国際ドキュメンタリー映画祭2019」に参戦するため。
そもそも、この映画祭に行こうと思ったのは、
8月に開催されたn.u.i project主催の35㎜フィルム上映会に参加したのがキッカケ。
上映後のアフタートークで、「この映画祭は、所謂、レッドカーペットの上を有名人が歩くお祭り騒ぎではない、ボランティア人たちを含めた、地元の人の支えによって成り立っている映画祭なんです。」という言葉に心射抜かれ、旅の予定を決めた。
台風の影響もあってか、山形は、気温も賑わいもどことなく肌寒い。 なんだかんだいって「お祭り騒ぎの映画祭」というイメージに囚われていた感。
とりあえず、ホテルに荷物を置き、腹ごなしのカレー。 かなりマッタリとした店員さん (東北のデフォルトなのか、別日の居酒屋でも注文とか、かなり遅め) 山形1発目の作品上映ギリギリの時間。 ヒマラヤカレーを一気飲み。
上映会場は、閑散とした山形駅のイメージを覆す程の、賑わいでほぼ満員。 否応なく、映画祭の熱気を体感。
始まる前から、2年後の再訪を心に決めたのでした。
以下、今回観た作品のざっくり感想。 (長文ですよー。)
観賞作品 1日目 ●「誰が撃ったか考えてみたか?」 Did You Wonder Who Fired the Gun? https://www.yidff.jp/2019/ic/19ic05.html
とにかく、音楽から画面のデザインレイアウトなど、隅々まで綿密に構成された映像は、ドキュメンタリーという枠組みを遥かに凌駕した作風。黒人差別が色濃く残る地域にルーツがある作者の曽祖父に対するサンプリングが、ドライな哀しみを含んでいる。最後まで観た後に、観ている側の資質を試されている感じで、ヒリヒリします。
●「トランスニストラ」 Transnistra https://www.yidff.jp/2019/ic/19ic13.html
まるで映像詩の様な作品。いちいち画が美しくて、湖と森、廃墟の微妙な彩度のコントラストにため息が出る。少女ターニャを取り巻く4人の男の子達の遊びの様な恋愛物語は、勿論ただの青春物ではなく、国と認められていない「沿ドニエストル・モルドバ共和国」を名乗って未承認国家のまま。そこに住む若者たち(家族)の決して裕福ではない生活が描かれている。 物語が進むに従って、どんどんターニャが色っぽくなってくるのがイイ。 やっぱり女の子は、先に大人になるのかも。
●「ラ・カチャダ」 Cachada-The Opportunity https://www.yidff.jp/2019/ic/19ic02.html
中米のエルサルバドルが舞台。露店でププサ(←おやきみたいで美味しそうだった)を売ったり、物売りをしたり、貧しくも子育てをする母親たちが、演劇に出会い、自己を解放していく物語。虐待、DV、レイプ、女性が直面するさまざま悲劇。話が進むにつれて、彼女たちの身の上が明らかになっていく。感情移入しまくりで、涙が止まらなかった。 彼女達の中の1人の言葉、「母性とは、誰もが持っていると思われているポジティブな言葉。それを持ち合わせていない女(母親)は、落第者。そのプレッシャーに押し潰される。」私は、独身で子供もいないけれど、グサグサと刺さった。
2日目の夜に行った「傳々(でんでん)」という店で、たまたまマレン・ビニャヨ監督に遭遇。拙い英語で、とにかくあなたの作品は、素晴らしかったと伝えられたのが嬉しかった。
この作品は、きっとどこかで配給がついて公開されるはず。
2日目 ●「ミッドナイト・トラベラー」 Midnight Traveler https://www.yidff.jp/2019/ic/19ic09.html
監督とその妻(映画監督)と子供達(姉妹)4人家族は、タリバン政権から受けた死刑宣告から逃れ、欧州へ国外逃亡を続ける。 政治亡命、難民キャンプを渡り歩き、安住の地を探し求める彼ら。全ての撮影を3台のiphoneで撮影。ブルガリアでの難民受け入れ反対の暴動シーンや、平原を突っ切り次のキャンプへ逃げるなど、辛いシーンもあるけれど、4人家族の信じられないほど美しくて愛おしいシーンを切り取っている。夫婦間の会話や娘達の行動が、困難な状況下でも大切に思えてくる。
何せ、可愛らしく愛おしいこの家族から、目が離せない。
きっとこの作品が劇場公開されたら、何度も観に行くと思う。
●「十字架」The Crosses https://www.yidff.jp/2019/ic/19ic03.html
ミッドナイト・トラベラーが「動」だとしたら、こちらは、「静」。 チリを舞台とした、とある製紙会社で起きた、労働組合員19人が射殺された事件を扱った作品。当時の関係者から訥々と語られる言葉が、妙にリアルで、人間の弱さを露呈している。ムラ的な発想は、企業の中にも潜んでいるのかも。 それとは逆に、映し出される風景が色々なものにクロスして見えてくる。先頭車両からの景色もCross(十字架)に見える。派手さが無い分、ジワジワと苦しくなる作品。
●「Memento Stella」 https://www.yidff.jp/2019/ic/19ic08.html
受け取り側の記憶を呼び起こす。「直接脳に語りかけてますよ、、、。」みたいな感じ。音と映像の没入感がすごくて、鑑賞後に移動中のゴーゴーと唸る電車の音や飛行機のエンジン音を聞くと、フラッシュバックのように思い出されてくる中毒性の高い作品。
3日目 ●「ジュナの惑星」 Junha’s Planet
今回の映画祭のインターナショナルコンペティション審査員ホン・ヒョンスク監督の作品。 韓国のとあるフリースクールに焦点を当てた作品。冒頭のシーンから、画面の美しさに心奪われる。本当に美しい。 惑星を彷彿とさせる丸いフォルムが要所要所に感じられる作品。 1人の自閉症の男の子ジュナを取り巻く環境が、大人たち、子供たち、街を含めた「お互いを知る」ことの重要さを丁寧に描いている。
●「ステップ・バイ・ステップ」 Step by Step
審査員長を務めたオサーマ・モハンメド監督の20代の頃に作った作品。 アラブの山間部の農村描いた作品。監督自身、「若過ぎた」と言っていたけれど、監督が思う、疑問の断片をつなぎ合わせた作品。
●「犠牲」Sacrifices
同じくオサーマ・モハンメド監督作品。イスラム社会、男女、格差、貧困、教育、アイデンティティーについてなど、たくさんのことが散りばめてある寓話のような作品で、きっともっとイスラム社会・宗教について素養があれば、何度も観たくなる作品には、間違いない。何処と無く、アングラ演劇を彷彿とさせる画面割りが、エキセントリックだった。 以上 「青木香 さん Facebook より」 今回、共にYIDFFを感じてくれた青木香さん。 心からの感謝とともに、今後の展開に期待膨らむばかりです!! (KONDO Shingo) 今回、N.U.I.projectのLOGOアニメーションを製作していただいた、 青木香さんプロフィールはこちら↓ http://www.aokawow.com/?fbclid=IwAR0iARzxSRt6S0-XmGcnM7EPenUQEbTH9bMSKo6LjWOmJqfD8G0xPGoLyRQ
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